MakerFaireTokyo2019出展の反省と今後の方針

8/3(土)~4(日)、東京ビックサイトにて「MakerFaireTokyo2019」が開催されました。

今回、初めて出展者として参加し、色々と反省や今後のモチベーションが生まれたので、それらをまとめておこうと思います。

なお、出展に向けた準備や心構えについて、こちらの記事にまとめておりますので、より深く知りたい方はご一読ください。

また、今回の展示で私の背景や経歴に関する質問を多く頂いたので、「管理人について」というページに簡単にまとめました。

作品に対する評価と反省

今回は、「ドロイド君とコロン君と戯れよう」というテーマでブースを設置しました。

左側がドロイド君、右側がコロン君についての展示となっています。

具体的なデモとして、次の動画のような事をしました。(自宅で構築した模擬ブースでの撮影)

以下では、それぞれのデモに対するお客さんの反応と評価、および自分が思った事を記載します。

ドロイド君の展示について

ボタンで動くよ

【反応・評価】
〇ガチャガチャできて、子ども受けが非常によい。
〇ブースの手始めとしていじる方が多い。
〇サーボと一つのレバーが対応していて、動作がわかりやすい。
〇ジョイスティックと連動する首の動きがクセになる。
〇動きがヌルヌルしていて気持ちいい。
×ドロイド君のしゃべってる声が、聞こえにくい。

【思った事】
〇操作が直観的で、ブースの最初のつかみとして有効。
〇頑丈に作ったおかげで最後まで壊れず(DJの真似しながらレバーをシャコシャコ動かす子もいた)
×ボタンを押すと2人の漫才が始まるが、音が小さくセリフの聞き取りが難しい。
 ⇒ 展示会では思っていた以上に音量が必要。
 ⇒ でも、あるお客さんが耳を近づけて全シーケンス聞いてくれて「セリフ選びにセンスを感じますね」と言ってくれて嬉しかった。

指を追うよ

【反応・評価】
〇スマホの前面カメラのみという、シンプルな構成でトラッキングできるの凄い。
〇画像だけで高さをどうやって判定しているの? ⇒ 指の幅だよ ⇒ なるほどな~!
〇指で目を回すギミックがかわいい。

【思った事】
×背景に高輝度な物体があるとNG。(ビックサイトの天井ライトが高輝度な点光源)
 ⇒ 1日目はデモできず。2日目は急遽治具を作成し、なんとか乗り切る。

ダンスするよ

【反応・評価】
〇すごい、かわいい、いやーん何これ。
〇多くの方が食いつく。無表情だった方もニヤっとしたり、反応を見れて嬉しい。
〇非同期なのに連携しているように見えて面白い。
×ドロイド君のセリフが聞こえない。

【思った事】
〇ダンスの音は5人が同時に同じ音を流すので、声と違ってよく聞こえた。
〇ドロイド君故障で急遽配置転換が必要になったが、microSDカードの差し替えで役割を交代できる仕組みが吉とでた。
×間延びしてしまったため、ダンス前の小芝居は不要だったかも。

総合

【反応・評価】
〇家に欲しい。売ってないの?
〇この小さいドロイド君に6個のサーボが詰まっていて、機構が凄い。
〇Twitterで見て、絶対見たいと思って来ました!
〇あまりにもかわいいので、友達も連れてまた来ました!

【思った事】
〇無線通信手段として、赤外線リモコンは最強。
×機構に難あり。腰の回転により、配線が痛み故障するケースが多い。

感想

1日目終了後も、壊れたドロイド君を修理したり、急遽治具を作ったりと、夜中まで頑張った展示でした。しかし、ドロイド君たちも頑張ってくれ、なんとか2日間乗り切ることができました。ドロイド君たち、ありがとう!お疲れ様でした!

コロン君の展示について

指で動くよ

【反応・評価】
〇ジェスチャで操作できるの面白い
〇ジェスチャと連動して目が動いたり、声でるのかわいい。
×ジェスチャを認識させるのが難しい

【思った事】
〇指で動かすという発想や、LCDの目の表示・音声など細かいこだわり部分のウケがよかった。
×子供向けの操作としてはちょっとクセがあって難しい。

物を追うよ

【反応・評価】
〇「まてー」「逃げろー」の声がかわいい。
〇すごい、なんで横の動きもわかるの? ⇒ 2つのToFセンサで追ってます ⇒ すげー!
〇この小ささにサーボが搭載され、顔を左右に動かせるの凄い。
×うまく追ってきてくれない

【思った事】
〇小さいコロン君が追ってきてくれるのが、なかなかなインパクト。
×測距センサ2つのみで左右の動きも検知しているため、ロストすることが多い。
 ⇒ やはり子供が遊ぶには難しい。

部屋を探検するよ

 このデモについては、最初の動画であまり触れていませんでしたので、簡単に解説します。
 これはSLAMもどきのデモで、壁とみなした板をコロン君の周りに設置し(写真左)、それを車輪オドメトリと測距センサを使って検知し、PCでコロン君の頭の中を可視化する(写真右)、というものです。
 全ての情報・演算はコロン君で閉じているのがミソで、PCではコロン君から送られてきた情報を可視化するのみとなっています。このため、これを発展させることで、コロン君単体で自律探索することができます。

【反応・評価】
〇この小さいロボットでSLAMもどきを実現しているのは凄い。
〇リアルタイムに地図が構築されていくのが面白い。
〇ROSを使わず、全て独自のシステムというのが驚き。
〇可視化ソフトのクオリティが高い。何のソフト? ⇒ Processingで1から作ったよ ⇒ うひょー!

【思った事】
〇その道の分野の方々に高評価を頂けて嬉しかった。
〇可視化ツールのウケが思った以上に良くて嬉しかった。
△予想通りBluetoothが混線して、可視化データがカクカクすることがあった。
×SLAMを「えすらむ」とドヤ顔で説明していたら「ああ、スラムの事か」とボソっと聞こえ、そこで初めて読み方を知った。(しかも2日目に知った)

総合

【反応・評価】
〇かわいい。
〇小さい筐体に立体的に部品を詰め込んでいて凄い。
〇顔があると生き物感が出て、すごく良い。
×しゃべってる声が聞こえない

【思った事】
〇一番のウリである、小さく詰め込んだこのサイズ感が褒められて、嬉しかった。
×置いてあると子供がつんつんいじり出すので、掲示など要検討。

感想

 ロボティクスの分野では、意外と自分のソフト屋としての力が生かせるのかもしれない、とちょっと感じました。一応、組み込み制御の元プロだからね(ドヤッ)。回路やメカは工作レベルですが…。
 それと、ふと気づいたらなんとM5StackのJimmyさんがブースにいらしていて、一通りデモを披露した後「いい作品だね。これ売らないの?」と褒めてくださいました。なんか、テンパってて「M5Stackユーザです!素敵な製品をありがとう!」とか全然言えなかったな…。あと、台湾の教育関係のコンサルの方が、同じく販売にものすごく興味を示してくださいました。皆様、ありがとうございました。
 ちなみに、デモについては、ちょっと難しい内容もあったので、大人と子供で使い分けていました(大人: 部屋探索のデモ、子供: スマホからラジコンで遊ぶデモ)。反応を見るに、これで正解だったと思います。また、無線通信には少し悩まされたものの、コロン君が壊れることは一度もなく、比較的スムーズにデモができました。コロン君、ありがとう!お疲れ様でした!

ブース運営について

 自宅で仮ブースを構築していたため、設営は迷うことなくスムーズでした。が、やはり一人はきつい。休憩できないし、ご飯もなかなか食べれない。いや、休めばいいんだけど、その間に接客できないのが申し訳ない気がしてしまう。

 お隣のブースはMakerFaire常連の「TICTAC-LAB」様で、とても素敵な作品を間近で長時間見学させて頂くことができました。

TICTAC-LAB様のワガラサウルス君たち

 加えて、ブースの方々がとても人当たりの良いやさしい方々で、コロン君にも興味をもってくださったりと、とても良くして頂きました。本当にありがとうございました。

 もう一つ、感銘を受けたのが「真広(まひろ)・テクノロジー」様で、サーボが作品に収まる形になるよう、CNCで自作したケースで再構成したり、綿密な設計で作品を創り上げていくそのスタイルに、とても多くのことを学ばせて頂きました。大人気で忙しいにも関わらず、何度も質問に来るウザい私にも丁寧に対応してくださいました。ありがとうございました。

 また、色々な方がブースを訪ねて来てくださいました。ドロイド君の好物にかけて、オレオの差し入れをもってきてくださったり、Twitter上でしかお話したことのない方にお会いできたりと、一日7,8時間の長丁場でしたが、あっという間に時間が過ぎていきました。

 皆様、本当にありがとうございました。

心に残った出来事

最後に、ある親子を接客した際、とても心に残る出来事がありました。

自分への戒めとして、書き記そうと思います。

(記憶の喚起と当時の臨場感を出すため、物語風に記述しています)


 時間は、2日目の午後16時頃だったろうか。

 この時間帯になると、家路に就き始める家族も多く、子供が最後のチャンスと言わんばかりに、少しでも多くのロボットをガチャガチャしたくなるらしい。

 そんな中、例に漏れず、ある子供がコロン君をガチャガチャと雑にいじっている。

 親はそれをみつつも、特に注意することもなく、ただぼーっと眺めている。親も疲れているのだろう。

 私はドロイド君側の接客中で、ちらちら気にはなりつつも、うまく嗜める隙がない。

 (何やってんだ、親も注意しろよ)。イライラが募る。私の疲れもピークに達していた頃だった。

 …そして、ドロイド君側の接客が終わり、コロン君をいじる子供の対応へ向かう。

 「ごめんね~、この子いじりすぎて熱くなっちゃったから、休ませるからね~」と言って、子供からコロン君を取り上げる。

 子供とその親は無言のまま、次の標的を探しに他のブースへと行ってしまった。

 「…ったく、一言も無しかよ」と内心イライラしていたところに、また別の親子連れがコロン君の前に現れる。

 この時、私は心でこう思った。

———また子供か。どうせガチャガチャいじりたいだけだろう———

 そう思った私は、子供の話を聞く前に「ごめんね~、今この子動かないんだよ~」とあしらい始めた。

 その子は残念そうに「えっ、どうして?」と聞いてくる。

 私は「ごめんね、電池切れちゃっててね」と適当な言い訳をする。

 その子は「そうなんだ…」と名残惜しそうに、他のブースへと移っていった。

 ——その後もしばらく客足が絶える事はなく、さらに30分ほど経ったある時…。

 親子連れが、コロン君を見にブースへやってきた。

 ふと子供の顔をみると、なんとなく見覚えがあったので「あれっ、また来てくれたんだ」と聞いた瞬間、(あっ、さっき適当にあしらった子だ…)と記憶が蘇った。

 子供は無口な感じだったが、一緒に来た母親が「どうしても見たかったらしくて…」と教えてくれた。

 「このロボットが気になるの?」と聞くと、無言でうなずく彼。

 私は、この瞬間、猛烈に反省した。

 彼という個人を見もせずに、自分の中で勝手に「子供」というカテゴリに分類し、適当にあしらう対応をした自分を恥じた。

 きっと、電池切れという原因で動かないならば、少し時間が経てば充電され、また動く姿が見れるだろう。そう思って彼は、また戻って来てくれたのだ。

 そこから私は、全力で彼にコロン君の説明をした。

 彼は、表情での反応は薄かったが、ジェスチャでコロン君を動かしてみたり、追尾を試してみたりと、とても興味があるようだった。

 「ロボットに興味があるんだ?」と聞くと、彼はうなずいた。

 「将来、自分でロボットを作れると、きっと楽しいよ。そうなれるといいね」と言うと、彼はまたうなずいた。

 親もその姿を見て満足したのか「たくさん勉強、頑張らないとね!」と話しかけていた。

 彼はそのあと、心ゆくまでコロン君と遊んでから、最後にお礼を言ってブースを去っていった。

 私はその親子の後ろ姿を見送りながら、彼があきらめず、またブースに戻ってきてくれて本当に良かった、と心から思ったのだった。

なんだか、道徳に出てきそうな話ですが、こんな事がありました。

一人でも多くの子が、私の作品から影響を受け、何かを目指すきっかけになってくれれば、それはとても嬉しい事なのです。

んまぁ、どれだけ影響を与えられたか、定かではないですが…。

今後の開発方針

ドロイド君

開発停止。このまま開発を続けても特に学ぶことがないため。また、今回の展示で満足してしまった事もある。

コロン君

自律探索とSLAM関連処理(スキャンマッチング・ループ閉じ込み)の実現。

PLEN君

新規取組。PLENは「PLEN Project Company」様で提供されている、3Dプリンタで印刷可能なかわいいロボット。この子にSipeed社のMaixシリーズを入れこんで、NNによる音声認識や画像認識できるロボットにしたいなぁ、と考え中。

プリメイドAIからの何か

新規取組。歩行型ロボットにも興味がわいてきたので、考え中。コマンド式のサーボの使い方を覚えておいて損はないかなぁ、と最初の一歩を検討中。とりあえず、マイコンは載せ替える気満々。サーボだけ抜いて、動物型のロボットにするのも面白そう。

基本技術の習得

CNCの使い方の習得、サーボの再構築にチャレンジ。

おわりに

今回のMakerFaireでは、多くの方と触れ合い、本当にたくさんの事を学ばせて頂きました。

ただ、事前準備や当日の疲れ具合を考えると、来年申し込むかは悩ましいですが…。

何か素敵な作品ができたら、また考えようと思います。

今回は、めちゃめちゃ長い記事になりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また、次回をお楽しみに。